Google Bardとは?生成AIの活用とChatGPTとの比較
Google Bardとは、Google社が発表した新しい対話型AIサービスです。2022年末にChatGPTが発表され、急激に世界で話題になりましたが、2023年に入りGoogleも対抗するようにBardを発表しました。
Bardとは
Google Bard(バード)とは、Google社が発表した新たな対話型AIのサービスです。自然言語処理技術の最新進化によって生まれた次世代の生成AIともいえます。従来のAIライターやテキスト生成モデルとは一線を画し、高度な文章の生成能力と応用範囲の広さが特長です。Bardは、深層学習モデルや大規模なトレーニングデータを用いて育成され、人間のような文章を生成する能力を備えています。
参考:Bard
このサービスには、Googleが開発している大規模言語モデル「LaMDA」を活用していて、さまざまな質問に対して柔軟に回答をすることができます。
なお、Googleでバードというとhumming bird(ハミングバード、人間との会話のように理解がむずかしい言葉から意図を解釈し検索結果に反映させるアップデート)やBERT(バート、自然言語処理モデルのこと)に発音が似ていますが、詩人(Bard)を指しています。
テキスト系の生成AI(ジェネレーティブAI)ではChatGPTが有名ですが、後発のBardも対話型で質問やプロンプト(命令)に答えてもらうことで、文章、エッセイ、コード、歌などをかいてもらうことが可能です。
参考:An important next step on our AI journey
LaMDAとは
LaMDA(Language Model for Dialogue Applications、ラムダ)は21年にGoogleが発表した対話型AIの大規模言語モデル(LLM)であり、BardにはLaMDAの軽量版が用いられています。LaMDAは会話を重視する特性を持っており、対話形式で回答が生成されます。そのため、Bardでは質問に対していくつかの答えが生成される形となっています。
また、LaMDA以外のGoogleが開発した大規模言語モデルにPaLM(パーム)と呼ばれる言語モデルがありますが、PaLMの一部の機能もBardに用いられています。PaLMは汎用性の高い言語モデルですので、組み込まれることにより、Bardの論理的思考力が向上したことが発表されています。
参考:LaMDA: our breakthrough conversation technology
Bardの特徴
Bardの最大の特徴は、自然で流暢な文章の生成能力です。過去のテキスト生成AIに比べて、文法や文脈の理解力が向上し、より人間に近い表現が可能になりました。また、Bardは膨大な情報を学習し、幅広いトピックに対しても的確な文章を生成することができます。
さらに、Bardは多様性を重視しています。単一の答えに固執せず、複数のオプションや視点を提示することができます。これにより、ユーザーが異なる視点やスタイルを選択することができ、より自由度の高い文章を生成することができます。
Bardの技術の進化
Bardの技術は、自然言語処理(NLP)の進歩によって大きく発展しました。長年の研究と実践により、より強力なモデルやアルゴリズムが開発され、Bardの文章生成能力が向上しました。
Bardは、大量のトレーニングデータを利用して訓練されます。これにはWEB上の文書、書籍、ニュース記事、雑誌などのテキストデータが含まれます。これらのデータをもとに、Bardは文法や文脈を理解し、より適切な文章を生成する能力を獲得します。
さらに、Bardは大規模な深層学習モデルを使用しています。これにより、複雑なパターンや文脈を理解し、人間に近い文章を生成することができます。また、Bardは常に学習を続け、新しいデータやフィードバックを収集することで、その性能をさらに向上させています。これにより、Bardは日々進化し続け、ユーザーに高い品質の文章を提供することができます。
Bardの発表について
Googleが周囲の予想よりも早めにGoogle Bardを発表したのは、Open AIが開発したChatGPTの大きなムーブメントがあったからだと見られています。
ChatGPTは、大規模言語モデルを活用したチャット型AIのサービスで、さまざまな内容の質問に対して非常に高い精度で回答してくれると話題になりました。その人気も、一過性のものではなく、エンジニアがプログラミングをする際に参考にしたり、ビジネスなどにも活用されるようになると予想されています。
また、開発元のOpen AIに多額の出資をしているMicrosoftは、同社が提供している検索エンジンBingにChatGPTを組み込み、すでにサービスが開始しています。
このような背景からGoogleはBardをいち早く世に発信することで検索エンジンのシェアを守ろうと考えたのではないかといわれています。
Bardの利点と活用法
Bardの利点は多岐にわたります。まず第一に、時間と労力の節約です。従来のライティングプロセスでは、文章を作成するために多くの時間とエネルギーが必要でしたが、Bardを利用することで、迅速かつ効率的に高品質な文章を生成することができます。
さらに、Bardは多様なジャンルやトピックに対応できます。ビジネス記事、ブログポスト、広告コピーなど、さまざまなコンテンツの作成に活用することができます。また、Bardは多言語対応も可能であり、国際的な視野を持つ企業や個人にとっても有用です。
Bardはまた、継続的な改善と学習が可能です。ユーザーからのフィードバックを収集し、それに基づいてモデルを調整することで、より正確で柔軟な文章生成が可能になります。これにより、ユーザーの要求に応じたカスタマイズやパーソナライズされたコンテンツの作成が実現します。
2023年5月11日からは日本語でも問題なく使えるようになりました。
参考:Bard が日本語に対応
テキスト生成AIの過去からBardへの進化
Bardの登場までのテキスト生成AIの歴史は長く、多くの進化を遂げてきました。初期のモデルでは、文法的な誤りや不自然な表現が多く見られました。しかし、時間とともに深層学習や大規模なデータセットの利用が進み、AIの文章生成能力は向上しました。
特に、Bardの先駆けとなったモデルは、より長い文脈を理解し、文脈に基づいた適切な文章を生成することに成功しています。これにより、AIの文章が自然で流暢になり、ユーザー体験が大幅に向上しました。
Bardの進化は、自然言語処理の研究や技術の発展によって支えられています。機械学習アルゴリズムやニューラルネットワークの改善、トレーニングデータの増加などが、Bardの進化を促進してきました。さらに、AI研究者やエンジニアの努力によって、Bardは日々改善されています。
BardとChatGPTとの違い
Googleが発表した生成AIであるBardですが、先行して発表されたOpen AIのChatGPTと比較されることが多々あります。どちらも質問や命令に対してテキストで回答するという点では共通していますが、以下の3つの点で異なります。
- 利用するデータ
- 回答速度
- 利用される検索エンジン
BardはWEBコンテンツをリアルタイムで参照しているのに対し、ChatGPTは2021年9月までの情報しか学習していないため、最新情報についてはBardのほうが精度の高い答えが出るはずです。
また、回答速度はBardよりもChatGPT3.5のほうが速く、その意味ではChatGPT3.5のほうが実用性が高いといえます。ただし、ChatGPT3.5の利用には費用がかかりますので、無料版のChatGPT3を使う場合ではBardと大きな差は感じません(有料版ではChatGPT4が利用できますが、速度面ではGPT3.5のほうが上)。
そして、実装される検索エンジンという観点でみると、ChatGPTはBing(Microsoft)に組み込まれ、Bing AIとして利用できますが、一方、Google BardはまだGoogle検索には組み込まれていません。将来的にはBardも検索エンジンに組み込まれることが想定されます。
※GoogleのAIを搭載した新しい検索エンジンSGE(Search Generative Experience)はBardとは別プロダクトです。
Chat GPTとの比較
試験的にChatGPT4とBardに「日本の企業で、WEBマーケティング支援をメインにおこなっている企業名を10個挙げてください。」と質問してみたところ、それぞれで下記のような回答をいただきました。
ChatGPT4の回答 | Bardの回答 |
私の知識が2021年までなので、それ以降に設立された企業については答えられないことをご了承ください。それを考慮に入れて、以下にWEBマーケティング支援をメインに行っている日本の企業をいくつか挙げます:
これらの企業は、広告、SEO、SNSマーケティング、コンテンツマーケティング、データ解析など、ウェブマーケティングの様々な側面をカバーしています。しかし、各企業の最新のサービスや状況については、直接その企業のウェブサイトや公式情報をご確認ください。 |
日本の企業で、WEBマーケティング支援をメインにおこなっている企業名を10個挙げます。
これらは、日本のWEBマーケティング支援企業のほんの一例です。WEBマーケティング支援を検討している場合は、必ず複数の企業から見積もりを取って比較検討することをお勧めします。
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ChatGPTの回答(表左側)を見るとWEBマーケティングをおこなっている企業は多いものの、かなり広い範囲で企業を選定していることがわかります。企業名だけではなく、どのような支援内容をおこなっているのかも記載しているのが特徴です。
対して、Bardの回答(表右側)は企業名だけを端的に挙げています。株式会社を表記しているので類似している企業であっても特定が容易な点は評価できます。ChatGPTと比較するとWEBマーケティング支援の会社をより正確に出しているように見えます。
Bardの応用事例
Bardは、さまざまな領域で幅広く活用されています。以下にいくつかの応用事例を紹介します。これらの応用事例において、Bardは効率性や品質の向上をもたらし、人間の作業をサポートする役割を果たしています。
コンテンツ制作
Bardは、ブログ記事、ウェブコンテンツ、マーケティングコピーなど、様々なコンテンツの制作に活用されています。ユーザーはテーマやスタイルの指定をおこない、Bardによって自動的に文章が生成されます。これにより、迅速かつ大量のコンテンツを作成することが可能になります。
カスタマーサポート
Bardは、カスタマーサポートの自動化にも活用されています。FAQの回答や一般的な問い合わせに対する迅速な応答を提供するために、Bardが使われています。これにより、カスタマーサポートチームの負荷を軽減し、効率的なサポート体制を実現します。
文章校正
Bardは、文章の校正や編集にも活用されています。文法やスタイルの調整、表現の改善など、文章の品質向上を支援する役割を果たします。特に、多言語環境では翻訳支援ツールとしても利用され、高品質な翻訳の実現に貢献しています。
Bardの課題と未来展望
Bardが直面する課題の1つは、信頼性と倫理です。テキスト生成AIは、誤った情報やバイアスを含む文章を生成する可能性があります。そのため、ユーザーと開発者は慎重に利用し、生成された文章を検証する必要があります。
Bardはまだ完璧ではありません。長い文脈や複雑な要求に対しては、依然として改善の余地があります。さらなる研究や開発によって、Bardの文章生成能力はさらに高度化していくでしょう。自然言語処理の分野では常に新たな技術とアルゴリズムが開発されており、これらの進歩がBardの性能向上に寄与しています。将来的には、より洗練された文章生成やさらなる多様性の実現が期待されています。
また、Bardの倫理的な利用についても重要な議論が進められています。文章の生成元や利用目的の明示、個人情報の保護、潜在的な悪用の防止など、倫理的なガイドラインや規制の整備が求められています。ユーザーと開発者、そして関連する団体や法制度との協力によって、適切な利用と責任ある開発が進められていくはずです。
さらに、Bardは回答を間違えることも忘れてはいけません。ChatGPTが学術論文、著書のタイトルと作者、リンクを間違って回答しているように、Bardもリリース初日に公開されたプロモーションビデオで誤った回答をしています。非常に高い精度の文章作成は可能ではあるものの、2023年5月時点では回答を全面的に信用することは危険だといわざるをえません。
Bardの未来への展望
Bardをはじめとするテキスト生成AIの進化は、コンテンツ制作やコミュニケーションの分野に大きな影響を与えます。将来的には、以下のような展望が期待されています。
ハイパーカスタマイズ
ユーザーがさらに細かな指示や要求を出すことで、Bardの生成結果がさらにカスタマイズ可能になります。スタイルやトーン、文体など、個々の好みやブランドイメージに合わせた文章を生成することができます。
リアルタイム応答
Bardのリアルタイム応答能力が向上すれば、ユーザーとの対話型コミュニケーションがよりスムーズにおこなわれるようになります。質問への迅速な回答やフィードバックの提供など、即座に文章を生成することが可能となります。
音声対応
テキスト生成AIが音声対応することで、会話やインタラクションの形式で文章を生成できるようになります。自然な音声合成技術と組み合わせることで、AIとの会話がより人間らしい体験となるはずです。
産業への応用
テキスト生成AIは、教育、法律、医療、翻訳など、さまざまな産業での応用が期待されています。例えば、教育分野では、Bardが教材の作成や個別指導のサポートをおこない、学習者のニーズに合わせたカスタマイズされた教育コンテンツを提供することができます。また、法律や医療分野では、法律文書の起案や医療情報の要約など、専門的な文章生成に活用されることが期待されています。
まとめ