マーケティングにおける環境分析とは?手法や活用シーンを徹底解説
会社の方向性を決めたり目標を定める際には、より具体的な戦略を立てることが重要です。しかしながら、そのためには社内や会社を取り巻く外部環境や内部環境を適切に分析する必要があります。
今回は、マーケティングにおいて環境分析が重要となる理由や具体的な手法、また活用できるシーンなども合わせて解説します。

マーケティングにおける環境分析とは?
マーケティング戦略を考える上で必要となる環境分析は、自社や市場など様々な要素を鑑みた上で、自社の強みや競合を把握するための分析を指します。環境分析は主に外部環境と内部環境のふたつに分けられまずが、まずはこれらの概要を理解した上で違いを理解する必要があります。
外部環境
外部環境は自社では制御できない外的環境を指します。人口の増減や市場の動き、法律や政治などは自分たちでコントロールすることはできません。
しかし、こういった環境はマーケティングに大きく影響するため日頃から注視しておく必要があります。
また、外部環境はマクロ環境とミクロ環境に分けることができます。マクロ環境は政治や経済などの自社では制御が不可能な環境を指し、ミクロ環境は競合や業界、顧客などより身近な範囲を指します。
どちらも非常に大切であり、一方の分析が十分でなければ会社の経営にも影響が出るため両方の細かな分析が重要です。
内部環境
内部環境は、会社の資金や人材、ブランド、商品など社内でコントロールできる環境を意味します。ブランドや商品の強み、または足りないところなど、どうすればさらに成長していけるかを考えるきっかけになります。
深く分析していくことで会社の強みがより活かせる分野は何か、資金力、売り上げなど自社の環境を客観的に知ることができます。内部環境は自分たちで改善していくことができるため、社内の環境を常にアップデートしておくことは大切です。
内部環境は外部環境から影響を受ける要素も多いため、外部環境の分析を参考にしながら内部環境分析を進めていくことがおすすめです。
環境分析の重要性
流行や風潮など、社会は常に変化しています。その時の時代に合わせたマーケティングをしようと思うのであれば、経済や社会の動向に目を向けなければいけません。
社内だけでなく周りの環境、そして会社の業界における立ち位置を理解することで将来の方向性を見出すことができるのです。
そのためには、様々な分析を行い会社の強みや課題を探る必要があります。競合他社や顧客、世の中の流れ、ニーズ、社内環境などを分析しておくことで、様々なシーンにも柔軟に対応できます。
既にある商品だけでなく新しいビジネスを始めたりする時でも、分析と改善を繰り返すことで好機を掴めるチャンスも十分にあります。経営と環境分析は非常に大切な関係にあることを頭に入れておきましょう。
外部環境分析の手法
自分たちで制御できない外部環境を分析するにはPEST分析と5フォース分析のふたつの方法があり、経済や社会、政治など世の中の動き、そして参入している市場の動きを読むことができます。それぞれの内容を理解し経営戦略を立てるうえでうまく活用していくことがポイントです。
PEST分析

PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字を取った言葉で、マクロ環境を分析する際に用いられる手法です。
たとえば、政権が変わると法律や市場の規制も変わる可能性があります。また、為替や株の動きも重要で、株価が上がることもあれば大きな災害が起きると大きく落ちることもあります。
さらに、社会の変化に敏感になることも大切です。特に消費者の行動は時代によって変わりつつあります。若者の消費率が少ないことや少子高齢化が進んでいることを踏まえ、今後消費者がどのような行動を取るようになるのかを予測する必要があります。
インフラが整備されたり新しい技術が開発されると市場の環境も変わります。マクロ環境は予測するのが難しいですが、いかに時代の流れを掴めるかがカギとなります。
5フォース分析

5フォース分析は、既存の供給業者(売り手)、買い手、競合他社、代替品、新規参入企業の5つの「脅威」の視点から業界の構造を読み解くフレームワークです。
買い手と売り手は業界の規模にもよりますが、自社との力関係が対等になっていなければ収益の減少に繋がる場合もあるため細かい分析が必要です。
また、競合他社の業界におけるシェア率や動向、会社との敵対関係の分析も非常に大切です。
他にも、テクノロジーが発達したことにより自社の製品に代わる代替品が出てきた場合、市場にとって脅威になるだけでなく競争力が下がってしまう可能性もあります。
代替品だけでなく、別の企業が新規参入してくると業界の構図が変わり会社のシェア率にも影響を与えることになります。
この5つの脅威を分析しながら、どうすれば会社の収益性を増やすことができるのかを探っていくことが重要になります。
内部環境分析の手法
外部環境の分析について解説してきましたが、ここでは内部環境の分析の3つの方法について詳しく解説していきます。
3C分析

3C分析は、Customer(顧客、市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から分析する方法です。
顧客は潜在顧客の年代層やニーズ、消費者の購買データを見ながら消費行動を分析していきます。顧客にアンケートを取ったり商品販売をしている場合は販売員に聞いてみるのもひとつの方法です。
市場はPEST分析のように市場規模や成長性を把握します。競合他社を分析する時は、商品数や顧客数、収益だけでなく業界でどのくらいシェア率を占めているのかもチェックするようにしましょう。
自社の分析も競合と同じように細かいところまでデータで出しておくと比較する際に参考になります。
3C分析で集めた情報は戦略を立てたり他の分析方法と合わせて活用するうえでも役立つため、事実を集めるというところに重点を置きましょう。
バリューチェーン分析

企業がユーザーに価値を提供するまでの一連の流れをバリューチェーンと言い、プロセスを見ていく中で自社の強みや改善すべきことが見えてきます。
今の経営戦略でいいのか、事業の進め方はこれでいいのかなど、過程をひとつひとつ見ていくことで課題も見つかります。
購買や製造、販売などそれぞれの部署でどのような付加価値が生まれているかを分析してみましょう。各部署の強みや優位性を書き出してみるのもおすすめです。
また、各プロセスでかかるコストも分析します。コストに見合った活動ができているのか、収益とも照らし合わせながら見ていくことでコスト削減にも繋がります。
それぞれの課題や良いところを整理しておけば新しい戦略を立てやすくなります。社内だけでなく競合社の分析も行っておくと比較もしやすくなります。
VRIO分析

VRIO分析とは、Value(経済価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの項目から分析する方法で、会社の現状を把握するのに役立ちます。
この分析は経済価値から順番に行い、YesかNoで判断していき、Yesが多ければ市場において会社の優位性は高いということになります。
経済価値というのは会社の製品やサービスが社会に価値を生み出しているかどうかということです。
商品やサービスの希少性が高ければ模倣される可能性が低いですが、誰でも真似しやすいものだと競合が多くなり優位性を保つことは難しくなります。
組織は会社全体の経営がしっかりと機能しているかがポイントです。どれだけいい製品を持っていても、社内の人材をうまく活かせてなければ思うように業績も上がらなくなります。
環境分析をする際のポイント
環境分析について理解してはいるものの、具体的にどのように進めていいか分からないと感じる人がいるはずです。ここでは、分析をする際に覚えておくべきポイントをいくつかご紹介します。
定量データと定性データを掛け合わせる
分析をする時は数字をデータ化できる定量データと、数字では見えない顧客の心情などの定性データを掛け合わせることをおすすめします。
たとえばある商品の売上が上がった場合、データでどのくらい増加したかなどは分かりますが、なぜ売上が増えたのかという理由は数字だけでは分かりません。その時に役立つのが定性データです。
ユーザーに対してアンケートを取り自由に回答してもらったり、消費者の行動を探ることで様々な理由を知ることができます。定性データだけでは正確な数字は取れませんが、顧客の多様なニーズを把握するのにとても役に立ちます。
マーケティングにおいて数字と消費者の行動は非常に大切です。どちらか一方ではなく、両方の分析を深く行うことを心がけましょう。
分析時の前提条件を整理しておく
最初に目的をはっきりさせておかなければ軸がブレて効果的な分析ができなくなってしまうため、あらかじめ条件を整理しておきましょう。
どの事業で、どういった顧客を対象にするのか、競合となる企業は何社くらいあるのかなど、分析する範囲を明確にしておくことが重要です。
会社の課題や強みは状況によって違うため、条件を決めずにやると範囲が広すぎて情報が薄いデータしか得られない、もしくは十分な結果を得ることができなくなります。
また、条件が曖昧なままだと何のために分析しているのかがあやふやになってしまう可能性もあります。より良い分析にするためにも何を分析したいのかをはっきりさせておきましょう。
広い視野を持って分析を行う
環境分析には様々な方法があるため、ひとつの分析に縛られず視野を広げることを意識しておきましょう。
社内の環境、もしくは市場、競合など、知りたいことに応じて適切な分析は異なります。ひとつの分析方法だけだと見落としていることもあるかもしれないため、様々な手法を理解したうえで分析を行うことが大切です。
また、客観的な視点から物事を見ることも心がけましょう。自分の会社を一度客観的に見てみると、競合の脅威や顧客の気持ちなど多くのことに気付くはずです。
常に広い視野で物事を考える、意識的に外から自社の状況を客観視するというのはマーケティングをするうえで大切な要素と言えます。
総合的な分析はSWOT分析を活用する
内部環境や外部環境を分析した結果をまとめたい時におすすめなのがSWOT分析です。

Strengh(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つを分析することができ、機会と脅威は外部環境を元に、強みと弱みは内部環境を元に整理していきます。
強みと弱みをしっかり理解することも大切ですが、弱みは今後成長していくためのヒントにもなるため、うまく活かしていけるかがポイントです。
世の中の動向や市場だけでなく、会社との関わりが深い消費者や取引先などの状況を見て機会を見つけ出していったり、どういう場合に脅威になり得るのかをきちんと把握しておくことも大切です。
環境分析の活用シーン
分析のやり方やポイントを解説してきましたが、ここからは具体的にどういった場面で活用すればいいかについてご紹介します。分析は随時やることが大切ですが、活用すべきシーンを覚えておくといざという時に役に立つので参考にしてください。
新規事業立ち上げ時
新しく事業を始める時は必ず分析を行う必要があります。参入したい市場の規模や競合を分析せずに事業を始めると、差別化を図ることができなかったり成果が出ない可能性もあるからです。
市場に参入できるチャンスはあるのか、どれくらいの収益が見込めるのか、それ以外にも経済や政治の動きに加えて消費者の動向なども分析しないと明確な戦略を立てることはできません。
優位性を保つためにも競合となる会社についてしっかりと分析しておくことも必要になります。
戦略が明確でないと必ずどこかでつまずいてしまいます。うまく経営していくためにも、これまでに紹介した様々な分析方法を使って強みや競合、課題などを把握しておくべきです。
市場に大きな変化があった時
社会や経済などに大きな変化があった場合、もう一度環境分析を行いましょう。
たとえば石油の値上がりや自然災害、戦争などで海外からの原料の輸入が難しくなると、自社製品の価格が上がってしまい消費者も買わなくなる可能性があります。
モノが値上がりすると消費者もお金を落とさなくなってしまい、国全体の経済が落ち込むと会社の収益にも影響が出ます。
近年だと、新型コロナウイルスの影響で世界的に経済が停滞し、物流が止まってしまうなどの影響も出ました。
こういった市場に影響を与える大きな変化が起きた時はもう一度環境分析を行い、強みや機会を活かせないか改めて考えることが重要です。
マーケティング戦略を作成する時
新しくマーケティング戦略を立てる、もしくは考え直すときも環境分析は非常に役立ちます。
既存の事業で新しい商品を発売するのであれば、その商品のターゲットやマーケットの規模、収益性など色々な観点から分析します。
分析を進めていくと弱みだと思っていた要素が強みであったり、参入できる機会を見つけることができたりと新しい発見もあります。細かく、そして深く見ていくことでマーケティングの方向性も自ずと見えてくるはずです。
事業を運営するにあたってマーケティングは不可欠ですが、その戦略を考える前に環境分析が必要です。業界内で会社がどれくらいの位置にいるのか、また競合との差別化を図るためにも必ず分析を行うようにしましょう。
まとめ
