日本における成長産業の１つは福祉業界です。人口動態を確認すると2050年までは高齢者人口が増加し続けると予想されており、今後、業界全体が大きく拡大するものと思われます。

一方で、一般の産業界からも注目が集まっており、新規参入会社が急増中です。事実、東京商工リサーチの「老人福祉・介護事業者新設法人調査」によると2020年には新規で訪問介護事業参入する企業は2,216社に達し前年比9.5%増、さらにデイサービスなどの通所・短期入所介護事業では102社が参入し、これは前年比37.5%の増加となっています。

このような競争激化時代を迎えている福祉業界においては、いち早くオンラインでの集客を加速させる必要があります。特に、検索エンジン最適化（SEO）を中心に進めることで、安定した新規顧客獲得を目指すことができます。そこで今回は、なぜSEOが重要なのか？そして、トレンドを踏まえた具体的な対策について詳しくお伝えします。

福祉業界におけるSEOの重要性

福祉業界は社会事業とはいえ「良き思い」だけでは存続できなくなりました。これまでは、良き思いの家内工業というイメージでしたが、競合企業も増え、今後は戦略を備えた科学的な経営へとシフトしていく必要があります。

そして、インターネットは事業を軌道にのせるうえで、今もっとも注目しなければいけないメディアです。そこでここでは、福祉業界におけるSEOの重要性についてお伝えします。

インターネット検索で情報収集するため

福祉施設の選定に際し、多くの利用者はインターネットを重要な情報源として活用していることが株式会社LIFULL seniorの調査から明らかになっています。この調査によると、介護施設に家族や親族が入居した経験がある人のうち、31.7%が「インターネットで調べた」と回答しており、これは「ケアマネジャーに相談した」に次いで2番目に多いものでした。

このデータを見る限り、施設側にとってはSEOを利用して検索結果の上位表示させることが、潜在的な利用者にリーチするための有効な戦略であることが分かります。

参考ページ:介護施設探しに利用した手段

市場拡大が期待できるため

日本においては今、人口構造が大きく変化しており、それに伴い福祉業界は市場拡大が期待される分野の1つです。実際、内閣府の『令和4年版高齢社会白書』によると、2025年には75歳以上の後期高齢者が2,180万人となり、2035年には85歳以上の人口が大幅に増加すると予測されています。

こういった背景から今後、高齢者向けのサービスや製品に対する需要増加も期待でき福祉業界には今、大きなビジネスチャンスが到来しています。このような業界全体の成長が見込めるタイミングでは、自社のブランド確立や新規利用者の獲得のために積極的な投資をおこなうべきです。特に、インターネットを活用したWEBマーケテイングは売上に大きく影響するうえ、SEOならリスクが少なく、多くの企業にとって始めやすい集客方法といえます。

参考ページ:令和4年版高齢社会白書 – 内閣府

競合の増加

東京商工リサーチの調べでは、2023年の福祉・介護事業者の倒産件数は122件で、過去2番目の高水準です。さらに、原因別では、大手事業者との競合や利用者減による「販売不振（売上不振）」がもっとも多い92件を占めています。このように、高齢者人口の増加に伴い福祉・介護ニーズが増大する一方で、サービスの担い手も着実に増え、いまや事業者間での利用者獲得競争は不可避となりました。

このような状況の中で、競争優位性を確保するためにはSEOが重要です。多くの顧客がインターネットを利用し、検索結果の上位表示されたWEBサイトに問い合わせることが多いためです。競争が激化する中で、効率的な集客をおこなうには、今からSEO対策に取り組んでください。

参考ページ:介護事業者の倒産は 過去2番目、休廃業 ・ 解散は 過去最多の 510件 人手不足、物価高で「訪問介護」の倒産は最多更新 – 東京商工リサーチ

福祉業界のSEO最新トレンド

国や多くの民間企業が注目している福祉業界ですが今、大きな転換期を迎えています。SEO対策を進めるうえでも、最新のトレンドを踏まえて対策をとるようにしてください。ここでは、福祉業界に特化したSEO最新トレンドと注目キーワードについて解説します。

社会参加支援

福祉業界が拡大する中で、多くの人が福祉と聞いて思い浮かべるのは医療や介護の分野です。しかし、ビジネスとして成り立つのはその範囲に留まりません。実際には、顧客である高齢者は、健康、経済状況、人生経験、職歴など、さまざまな背景を持つ人々で構成されています。この多様性を踏まえると、高齢者の社会参加や就労支援へ注力するのも1つの方法です。

ディップ株式会社の調査では、55歳から79歳の男女約60%が定年退職後も働き続けたいと望んでいます。具体的には、月収20万円以上を希望する人が6割を超え、8時間以上働きたいとする回答も半数を占めています。また、働くことは経済的な利益だけでなく、生きがいを感じることにもつながっています。このように、健康な高齢者向けの就労支援サービスは、社会的なニーズがあります。

参考ページ: ディップ株式会社

高齢者の社会参加を支援する具体例としては、株式会社ぴんぴんころりが運営する「東京かあさん」が挙げられます。この施設では、高齢者の女性を中心に家事代行やベビーシッターなどのサービスを提供し、同時に生きがいを創造しています。

参考ページ:東京かあさん – 株式会社ぴんぴんころり

こういった分野でのSEO対策では「高齢＋就労」「定年後＋就職」「高齢者＋働き方」などのキーワードが重要です。これらは、高齢者やその家族が就労支援サービスを探す際に頻繁に使用する言葉であり、効果的なSEO対策になります。

シニア女性向けのサービス

福祉業界におけるSEOで注目すべきトピックの1つは、シニア女性向けサービスです。女性は男性よりも寿命が長く、高齢者全体に占める女性の比率が高いです。実際、2030年には75-84歳の女性が男性の約1.28倍、85歳以上では約2倍になると見込まれています。このような人口動態を踏まえると、ビジネスにおいてはシニア女性に焦点をあてることが成功の鍵です。

SEO対策において重視すべきキーワードは「福祉関連キーワード＋女性」です。このようにシニア女性をターゲットにしたキーワードは今後、検索ニーズが高まる可能性が高いといえます。

参考ページ:調査月報（2030年の65歳以上人口の男女比較） – 日本政策金融公庫

1人暮らし自立支援

1人世帯向けの老人介護サービスは、福祉業界における注目すべきトピックの1つです。日本の高齢化が進む中、65歳以上で1人暮らしをする高齢者の数が増加しています。実際、内閣府の調査によると、2016年時点で65歳以上の人がいる世帯（1人暮らし世帯を含む）は全世帯の48.4％と約半数に及び、そのうち27.1％は1人暮らし世帯です。独居老人の増加傾向は今後も続くと予想され2040年には896万人に増加すると考えられます。

このような背景から、今後、他者の支援を必要とする高齢者が増加することが予測できます。そのためも、高齢者の1人暮らしを支援する福祉サービスへの需要が今後、高まるといえます。

例えば、1人暮らしの高齢者は、社会的孤立や偏った食生活、認知症のリスクといった問題に直面ことが考えられ、これらの問題に対応する支援サービスのニーズが高まると考えられます。そこで、具体的なSEO対策として、特に「1人暮らし＋高齢者＋食事」「独居老人＋支援」といったキーワードが重要です。

参考ページ:日本の世帯数の将来推計 – 国立社会保障・人口問題研究所

就業移行支援サービス

精神障害者を対象とした就業移行支援サービスは、福祉業界において注目されているトピックの1つです。障害者の中でも高齢化が進んでいることと、精神障害者へのサービス提供が比較的少ないため、今後この分野の需要が拡大することが予想されます。

特に、近年は福祉サービスに馴染みのない精神障害者の利用が増加していることから、なるべく早い段階でSEO対策に着手すべきです。具体的なキーワードとしては「地域名＋精神障害サービス」「精神障害＋就職」といったものが考えられます。

参考ページ:身体障害者、知的障害者および精神障害者就業実態調査 – 厚生労働省

制度外ビジネス

福祉業界は、一般的な市場ではありません。なぜなら、価格設定や提供できるサービスの種類などが、国によって決められているからです。需要と供給のバランスに基づく市場原理が働かないため、福祉の市場は官製の準市場ともいわれています。このように、行政から報酬をえる制度ビジネスは、提供できるサービスの種類に限界があり、利益を最大化することが困難です。

そこで今後、収益を伸ばしていくには全額自己負担が原則の「制度外ビジネス」に注力を注ぐべきです。具体的には食事の宅配サービスや家事代行などが考えられます。候補となるキーワードとしては「高齢者＋トイレ介護」「高齢者＋買い物代行」などが考えられます。

福祉業界のSEO対策

ここでは福祉業界のSEO対策についてお伝えします。市場のトレンドを踏まえつつ次の基本を踏まえて対策を進めてください。

ローカルSEO

福祉業界は基本的に地域密着型でサービスを提供するものが多いです。そのため、ローカルSEOが重要です。ローカルSEOとは、地域に特化した検索エンジン最適化のことで、具体的には「地域名＋高齢者サービス」「地域名＋介護支援」などのキーワードに対して検索エンジンで上位表示を狙います。

参考ページ:ローカルSEOとは？ローカル検索のメリットと押さえておくべき対策方法を解説

指名検索対策

指名検索対策も重要なSEO対策の1つです。指名検索とは、自社の社名やサービス名などで検索された時、検索結果に上位表示されるようにすることです。看板などで名前は知っているけれど、詳しい情報は知らないという顧客に対して指名検索対策が有効です。

Googleビジネスプロフィールの活用

Googleビジネスプロフィールの活用はSEO対策において重要です。Googleビジネスプロフィールとは、事業者が自社のビジネス情報をGoogleの検索結果やGoogleマップに無料で表示させることができるものです。

特に地域密着型の福祉サービスにとっては、必須といえる方法です。これを活用すれば事業者は所在地、営業時間、連絡先、施設写真、顧客レビューなどの情報を検索エンジンで表示させることができます。

参考ページ:Googleビジネスプロフィールとは？集客ツールとしてのメリットや登録方法などを解説

福祉業界のSEOで注意すべき点

ここでは、福祉業界のSEO対策についての注意点をお伝えします。以下の点を守って対策を進めてください。

動画や画像を掲載

自社のWEBサイトには、画像や動画を使用するようにしてください。なぜなら、文字情報よりもイメージが伝わりすく、顧客にサービスの魅力や信頼性を伝える良い手段となるからです。例えば、画像や動画でスタッフの顔を公開したり、動画による音声メッセージを伝えることで、サービス提供者側の人間性や温かさをアピールするのに役立ちます。

また、このように画像や動画をWEBサイトに掲載することは、検索エンジンから高く評価されることにつながります。

更新頻度を上げる

WEBサイトの更新頻度をあげることにも注意してください。例えば、施設情報やイベント情報、利用者の声、スタッフからのメッセージなどを積極的に掲載し、その内容を更新し続けることで顧客はWEBサイトを信頼し、安心感をえることができるからです。

また、更新頻度が高いWEBサイトは、情報の鮮度が高いという理由で検索エンジンから高く評価されやすいです。逆に更新が止まってしまうと、次第に順位を落とすこともあるので注意してください。

参考ページ:更新頻度とSEOの関係とは？更新が重要視される理由

アクションを起こせるようにする

WEBサイトに訪問したユーザーが、資料請求などのアクションを起こせるように配慮してください。アクションは資料請求だけでなく、施設見学会やサービスのお試し体験などでもかまいません。どのようなものであっても、WEBサイトに訪問した顧客が次のアクションをとれるよう導線を作っておくことが肝心です。

福祉業界SEOのよくある質問

ここでは、福祉業界のSEOについてよくある質問を取り上げ解説します。
 

まとめ

福祉業界におけるSEO対策は、高齢化社会の進展や福祉市場の成長に伴い、ますます重要性を増しています。特に注目すべきトピックとして、シニア女性向けサービスや１人暮らし支援などが挙げられます。また、ローカルSEO対策や指名検索対策などの基本もしっかり取り組んでください。問い合わせや資料請求などのコンバージョンを高めるためには、WEBサイト内で導線設計をおこなうことも肝心です。このあたりは、経験豊かなSEOコンサルタントと相談して進めることで、より短期間で成果をあげることができます。福祉業界は口コミの影響も大きいので、SEO対策は顧客の信頼を築きながら成果をあげる戦略的なアプローチが肝心です。今回の記事を参考に早速取り組んでください。

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この記事の監修者

アドマノ株式会社　代表取締役　天野　剛志

日本大学法学部卒業、広告代理店で12年間働いている間、SEOと出会い、SEO草創期からSEO研究を始める。SEOを独学で研究し100以上のサイトで実験と検証を繰り返しました。そのノウハウを元に起業し現在、11期目。営業、SEOコンサル、WEB解析（Googleアナリティクス個人認定資格GAIQ保持）コーディング、サイト制作となんでもこなす。会社としては今まで2000以上のサイトのSEO対策を手掛けてきました。